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コリネバクテリウム ウルセランス感染症はどんな病気なのでしょう・・・?

解説 小川高(小川動物病院)
 2016年に福岡県の60代の女性が「コリネバクテリウム ウルセランスCorinebacterium Ulcerans感染症」によって死亡していたことが報道されました。
 平成29年11月までに報告されている人のコリネバクテリウム ウルセランス感染の報告は25件あり、この中には野良猫などからの接触感染が疑われている例が含まれます。
 感染者数は、インフルエンザなどと比較した場合、極めて少なく、非常にまれな感染症といえます。 普通の免疫力をもっている人が、犬・猫を通常の飼育管理をしていれば、感染することはほとんどありませんので、過度に心配することはありません。
1.どんな菌なのでしょうか・・・?
ジフテリアという病名を聞いたことのある方もあると思います。そうです、これは我々が幼少期に受けた3種ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)に含まれている1つです。
 ジフテリアとは、ジフテリア菌が産生するジフテリア毒素による咽頭粘膜の爛れ症状を意味しています。このジフテリア毒素を産生する菌には2つあります。1つは人に感染するコリネバクテリウム ジフテリー、もう1つの菌が人にも動物にも感染するコリネバクテリウム ウルセランスで、今回話題になっているものです。  この菌は、我々の周囲に普通に存在する正常細菌叢の1つで、特に、牛などの家畜には常在していると思ってください。この菌がバクテリオファージという現象で溶原化(変異すると思ってください)することで、毒素を産生する菌に変異した場合に初めて人や動物に毒性をもちます。
2.どのように感染するのでしょうか・・・?
この菌に感染し、鼻汁、よだれなどに大量に排菌している動物に、濃厚接触した場合に感染することがあります。そして、免疫力が低下している人や動物(がんなどの基礎疾患がある、高齢、免疫抑制剤を服用中など)では、より感染しやすくなります。 
3.濃厚接触とは・・・?
この菌に関する報道を見聞きしていると、『濃厚接触』という言葉が多く使用されていますが、いったいどんな意味なのでしょうか…? これは私なりの解釈ですが、『濃厚接触』とは感染するのに十分な量の細菌を体の中または表面に取り入れる程に接触することです。 したがって、感染源となる個体(野良猫など)には、それなりの症状(鼻汁分泌、咳、くしゃみ、涎など)があることがほとんどですので、このような動物に触れないことが大切です。
4.治療方法は・・・?
万が一、人や動物が、今回死亡例があり話題となっているコリネバクテリウム ウルセランスに感染したとしても、抗生物質による治療が可能ですので、必要以上に心配することはありません。 通常のペットとの生活で、動物の健康状態に気をつけ、異常がある場合には、早期に動物病院で診察を受けるという基本を守れば、心配ありません。
体調に異常がみられたら、早めに病院へ・・・人も動物も、同じですね
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